海辺から半歩下がって綴る《ドラマ・映画の話》

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ドラマ 「ハケンの品格」感想

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13年の時を経て「ハケンの品格」主要メンバーがそろった

2020年春シーズンに放送されたドラマ「ハケンの品格」が8月6日完結した。

スーパー派遣社員大前春子が13年の時を経て戻って来た!

前シーズンも観てましたけど、すごいよね。主要なキャストが今もそろうんだから。

新型コロナの影響で、撮影が一時ストップし、放送開始が遅れたことにより、前シーズンの再編集版を見て思い出す事もできたし。準備はバッチリでした。

 

まったく知らない人のためにいうと、スーパーマン的に有能な派遣社員:大前春子と彼女が派遣されたS&Fという食品会社の営業部の人々の物語です。

おもなキャスティングは、大前春子=篠原涼子、S&F営業部社員・東海林=大泉洋、同里中課長=小泉孝太郎、同社員浅野=勝地涼。この旧メンバーが変わらず第1戦で頑張っているからこそ今回そろったわけで、感慨深い。

はたして会社の風景は変化ないのか?

この13年で日本は非正規労働が増加。働く現場の状況は全然よくなってない。派遣はみんな低賃金、長時間拘束にあえいでおり、消費税もアップして、くらしは厳しくなるばかっり。

オープニングナレーションは毎回、「おごる社員は久しからず。いまや会社は派遣社員なしでは回らない・・・」という感じで始まるけど、ホント、いないと困るくせに使い捨て。なんとかならないのでしょうか。同一労働同一賃金って全然実施されてませんよね?この格差を固定するような仕組みはまずいよ。もっと救えるはずじゃない?とか思うけれども、それはそれとして、このドラマの大前春子からすると「社員が働かないのは知ってます」みたいな感じなので・・・。(割り切りがすごいんですけど)

 

今回、社長(=伊東四郎)が導入するのはAI。いろいろあるけど、営業部長(=ドランクドラゴン塚地)もほかの部員もリストラ対象になるという現代っぽさがもりこまれている。大前さん(ドラマでも「大前さん」とよばれているのでいきなりそう呼ぶけど)の目には「日本もこのままでは・・・」と映ってるようですしね。

平成30年間で、何かを失ってきたことを踏まえて、それでも、働く私たちを描いていると言えるでしょう。(ただしコロナ禍以前までのです)

スーパー派遣:大前春子を見て今どう思うのか

13年前に大ヒット企画で社長賞を里中にとらせた大前春子が再び里中課長の要望でS&Fに配属される。そして、毎回、普通のOLを超えた高い技能を発揮して、人のピンチを救う。

こんなスーパーマンじゃないと、世の中を生きられないのか?と思うと辛いけど、結局、人って、職場で言われたことだけしているようでは、面白くないんじゃないの?という意味にも受け取れる。

上司に逆らわずに面倒なことを避けて言われた範囲をやれば、大前さんから見れば「給料泥棒」状態でも問題ないからいいでしょうという社員ばかりでは「会社自体が沈没する」から、ちゃんと社員が仕事に向き合って成果を出そうとしないとダメだってこと。

面倒な作業はハケンにやらせて、ぐうたらしている社員って偉そうで無駄ってこと。

そういうメッセージを感じたし、社会的に意義のある事業に夢中になった里中と部下たちは、起業していく道を切り開いたという流れにも可能性はあると思った。

厳しいとは思うけど、社会に役立つサービスを提供していくっていうのが、生きがいになっていいよね、と思う。

ただ、大前さんが最後、ハケンではないまったく想像外の仕事で現れたことには、驚いたわ~。

あれはどういうことなのかな・・・。

超有能なオフィスワーカーだった大前さんも、最後は、そういうのではなく「音楽」「芸能」「エンタメ」のパフォーマーになったってことだよね。もともとフラメンコダンサーでもあったから、ステージに立つことは好きなんだとは思うけども。

メッセージとしては、「人はアーティストとして表現することが幸せ」ってことなのかなあ。

今は、TVに出なくても、ひとりひとりが発信できる世の中だから、そういうことはできるよね。創造的にアーティスティックに音楽などをひとりで発信していける。だから、大前さんのように、もしも音楽が好きなら、ずっと続けて、最後にはプロになれるかも…。

ここがみどころ!(個人的な意見)

①東海林と大前の掛け合い

これは前シリーズからの流れがあるんだけども、東海林=大泉洋の髪が天然パーマであることを活かした脚本があり、大前=篠原涼子はつねに「このクルクルパーマはなんなんですか」みたいなからかいの言葉をセリフに入れるんですよね。それに対して、大前春子はいつもハイネックの服を着ている設定なので、「なんだと、とっくり~!」とキレる大泉の掛け合いが定番なのです。(とっくり=徳利セーター=ハイネック)

今回も地方に飛ばされた(前シリーズで)東海林が帰ってきて、俄然面白くなったわけで。こういう風に、キャラが役者としっくりあって、普通に会話するシーンが面白くなってくると連続ドラマは楽しいですよね。

で、里中(=小泉)が止めにはいって、「なんだよ、けんちゃん、止めるなよ」となる。

美しい流れ。この流れの再現のためにも、3人のキャストは不変である必要があったと思います。

②大前春子の資格多すぎる件

前シリーズでも、マグロ解体ショーを実演したり、助産師としてケーキ屋さんでお産を仕切ったりした大前さん。

今回も、クルーザーをいきなり運転したり、検査分析士としてクッキーの成分を再検査したり、気象予報士として天気を予想してお弁当の生産数を決めたりと活躍。いったいいくつ資格を持っているのよ。多すぎ……。

さらにディスプレイ用の店舗が発表前にダメになったりすれば、鳶職経験を活かして仲間を呼んで復活させたりも。ありえん・・・とも思ったが、まあそんななんでもできる大前さんなのです。

なにか事件が起きて、ピンチになるたび、今度は大前さんのどんな技能が発揮されるんだろう?というのが、このドラマの見どころなんですよね。

そして、資格じゃないけど、特技に「ナレーター」というのもあって、前シリーズでも大前さんがイベントで東海林の原稿を読み上げると、不思議と周囲の人々が集まってきて、商品が飛ぶように売れるという現象がおきたのだが、今回もやってくれました。

その時の必須アイテムが「被り物」。チョコレートやらお弁当などの被り物を今までも被ってきた大前さん。今回被ったのは「アジフライ」。

楽しいですね~。

③所詮は流れ者・・・さすらいの用心棒

大前春子は笑わない。無駄口をきかない。「自分、口下手なもので」というか、往年の三船敏郎みたいなもんなんです。

どっちの側につくのかは、金次第のさすらいの用心棒・・・と見せかけて、情にも厚い、正義の味方。味方につけば鬼に金棒。頼りになること間違いなし。でも、ずっといてほしいと思っても、拒否。契約が終われば去っていく。

そういう王道のヒーロースタイルが、ドラマの構成の元型にあるので、そりゃ面白いですよね。

まとめ:職場ドラマの魅力

というわけで、今回も堪能させてもらいました。制作陣・出演陣のみなさんおつかれさまでした。ありがとうございました。

会社とか官庁(刑事もの)とか、店舗や病院などなどを舞台にした「お仕事」ドラマは多いです。働くということは、私たちにとって身近かなことですので、これからも、「職場」は大事なテーマですよね。

コロナ禍真っ最中で、異常な夏ですけれども、感染リスクあっても、生活のために働いている庶民の存在を忘れることなく、今後のドラマに活かしてほしいですよね。

もうリタイヤしている人は「感染」を避けて閉じこもれるけど、現役世代は「流行っているよ」「春より多いよ」と脅されながらも、働いているわけで・・・。

しかも、業績悪化してて仕事がない!という苦しみを経験している人もたくさんいる。

こういった時代も反映して、問題提起しながら労働環境が良くなっていく力になるような、社会に元気を与えるドラマがつくられていってほしいですよね。