海辺から半歩下がって綴る《ドラマ・映画の話》

海辺でのんびりするのも、本もドラマも映画も好き!つまらなくても、面白くても、見たままログ。

宮藤官九郎×阿部サダヲ ドラマ「不適切にもほどがある!」第5話までの感想

期待を超えてきた宮藤官九郎ドラマに注目!

コロナが社会に打撃を与えて数年たち、昭和も本当に遠くなった気がする今日この頃。毎週の放送を楽しみにするドラマがあるって素晴らしいですね。

2024年1月期はTBS金曜22時からの「不適切にもほどがある!」がダントツにパワフルで目が離せない。

主演は阿部サダヲさん。脚本は宮藤官九郎さん。プロデューサーは磯山晶さん。

家族愛・人間愛に満ちた小川市郎(阿部サダヲ)のドラマでありつつ、38年前の1986年頃の昭和と今(令和6)をタイムスリップして行き来してしまう展開の中で、文化を比較しつつ、SF的な面白さを加味した、クドカンの切れ味のいいギャグも健在の濃い~ドラマです。

このドラマ、決して昔がよかったと言いたいわけではなく、けれども、昔がすべてよくなかったわけじゃない、というスタンスなのだと思います。今も、メンタル不調の人が多いし、子どもたちのいじめなどの問題・課題は数多くあります。私たちが見失っているものがなんなのか?を追っていき、小川市郎が時間を飛び越えて、人が幸せになるってどういうことなのかを問う、そういうことなのでは…と思います。

第1話で引き込まれる 昭和ワールドの洗礼 (ここからネタバレ)

1986年を感じさせる数々のシーン。懐かしくてほほえましい部分もありましたが、今だったら「不適切」な言動の数々も多めに描写されており、ひいてしまう人もいたかも。真っ赤な口紅で登校する主人公の高校生の娘・純子河合優実)。聖子ちゃんカット(もしくは中森明菜っぽい?)に長いスカートであばずれという設定。かつての不良少女は、こんなに真っ赤な口紅で、学校行ってたの?本当に?というインパクトは結構あります。

中学の体育教師である父・小川市郎は、野球部顧問。生活指導の担当でもあり、「地獄のオザワ」とも言われているのですが、自分の娘・純子は優等生ではないっていうところも、笑えるポイント。(純子なりの理由があったわけですが)幼いころに母を亡くした純子を男手ひとつで育てているだけに、「ブスだな~」と言いながらも愛にあふれている感じですね。

野球部での指導も、厳しいというか手荒な感じ。当然たばこを吸うし、たばこを吸うシーンも多数あります。実際、教員室にも灰皿ありましたし、喫煙は普通でした。

一方高校生活を楽しんでいる純子が友達3人と商店街を歩く姿は、「スケバン」そのもの。とはいえ周囲をにらみつけるという感じはないんだけど。

純子があこがれているムッチ先輩(磯村勇人)が単車で登場するシーンも見どころでした。とにかくすべてにおいて近藤真彦(愛称:マッチ)の影響を受けまくっているムッチ先輩。セリフのほとんどマッチの曲の歌詞というキャラで笑わせてくれる。

未来に行ったときの反応がリアル

そんな小川先生が、いつものようにバスで帰宅途中に、突然未来に行ってしまう…。バスの中で煙草吸っているのを、他の乗客から奇異なものを見る目で見られ…何?と、逆に乗客をよく見ると周囲の方が「変」なわけで。「耳からうどん垂らしてるの何?」「みんなが持ってるツルツルした四角いの何?」ってなるのはまさに!でしたね。

違和感ありつつも普通にバス停を降りて、そのまま普通に家に帰ろうとするわけですが、「スカイツリー」にはさすがにぎょっとしてましたよね~。

コンビニのたばこも高くなっていて(190円が520円に)、いろいろ変だとは思っているんですが、行きつけの喫茶店が健在だったおかげで、迷わずそこに立ち寄り、ほっとしたのもつかの間、少年ジャンプの背表紙に「2024」とあるし、知らない漫画ばっかりだし、「は?」となる。

そこで子連れの女性(仲里依紗)のコップについだばかりのビールを勝手に飲み、キレられる。「ごめん」おごるから…と言って、いったんトイレに入って壁の小泉今日子さんのポスターをめくったら、過去に戻れたっていう…。

情報量が多い。セリフが面白い。違和感の感じ方が面白すぎる。

話し合いましょう~♪ あぶりしめ鯖♫

未来の行きつけの喫茶店「すきゃんだる」で一瞬出会った、女性(仲里依紗)が気になって、今度は意図的に未来へのバスに乗った小川先生。

居酒屋でタブレット注文に四苦八苦。頼みたいレモンサワーが来ないのに、あぶりしめ鯖ばかりが猫ロボに運び込まれてしまう。

隣の席でサラリーマンの秋津くん(磯村勇人・一人二役)が上司2人に「後輩からハラスメントで苦情が来ている」と言われている。それを小耳にはさんで「がんばれって言ったらいけないの?」と話しに割り込んでいく小川。上司二人には「関係ないのに入ってこないで」と言われるのだが、「こんな未来のために俺たち頑張ってるわけじゃない。メンタムかなんかしれないけど」という小川。

タブレットを秋津が確認するとなんと「あぶりしめ鯖は200個」注文されていた…。(爆笑)

そして話し合いを打ち切ろうとする上司に…秋津は突如歌い出す。「話し合いましょう~♪ たとえ分かりあえなくても~」と。磯村さん、声がいい!ミュージカルがここで!?と笑ってしまう。

妙に息が合っている秋津と小川。女性上司も「今年で入社13年目、メンタルとっくに死んでます~」と歌にはいってくるし…。

ハラスメントで訴えていた後輩も居酒屋にやってきて、「叱ってほしかったんです~」とディズニープリンセスのように歌い上げ、居酒屋はミュージカルのステージになったのです。新鮮でした。

そして2話から5話・・・ネタバレあり

どういう方向に進むのか、だんだん見えてくる感じで、目が離せません。

38年後も生き残っている喫茶店「すきゃんだる」が、過去への回路を持っているのがポイントですよね。そこでバイトを始めた渚と小川は再会します。忘れたスマホを渡そうと小川を追って、秋津もすきゃんだるへやって来て。何かと憩いの場として大活躍なスポット。

渚(仲里依紗)が、小川にビールを飲まれたことがショックで、産休が明けてテレビ局の仕事に復帰したものの、無理が重なって限界にあった心がおれ、辞表も出して、夫と別れることになったと聞いて、責任を感じる小川。

というか小川は渚に一目ぼれしているし、勝手に「なぎさっち」と呼んでいるんですが、退職手続きのため職場にいる渚からSOSがあり、小川先生は、渚を助けようとテレビ局まで出かけ、なぎさっちのために、昭和の人間として意見を言ったことが気に入られ、「地獄のオザワ」としてテレビ局のカウンセラーの職につく。渚も辞表を取り下げ、仕事に復帰する。

第2話で、悪者になってしまった渚の元ダンナは、フリージャーナリストの谷口龍介。演じたのは、柿澤勇人さん。渚の職場で繰り広げられたミュージカルシーンでの歌も踊りも素晴らしいと思ったら、劇団四季出身の人でした。

過去に残してきた純子には、未来から過去へ向かったキヨシ(純子に一目ぼれしている中学生)とその母・向坂サカエ(吉田羊)が同居し面倒をみることになり、キヨシのスマホを過去から持ってきていた小川先生とサカエは、スマホを介して連絡も取れるようになった。

キヨシは令和から昭和に行って、やたら元気になったようです。令和では不登校だったのに、短ランボンタンに制服をアレンジし、毎日中学に登校。若者は順応が早いですね。坂元愛登という役者が演じています。

妙に小川先生と渚が心惹かれあってしまう理由は、だんだんと明らかになります。ムッチ先輩は秋津くんのお父さんだったことが早めに分かるわけですが。(一人二役ですしね)

また3話でキヨシの父と令和で出会う小川先生。なんとキヨシの父は、教え子の井上くんだったわけで…。井上氏は、小川先生の一言で、タイムマシンを開発することを志して、成功させたのだというわけだったのです。

井上氏はタイムパラドクスを避けるため、誰かの存在を脅かすような未来人と過去人の関わりあいには「ビリビリ~!!」となると教えてくれる。

まさに渚と小川先生が接近すると「ビリビリ~!!」となることから、渚は何かを察知し、「父と会ってください」と小川先生に宣言。

そして4話の最期に現れたのが…古田新太。渚の父親役が古田新太さん。なぜか泣いていて…。

5話で渚の父親についてはいろいろ分かってきます。若いころはディスコの黒服だったそうで。その時代の父親は、錦戸亮が演じ、ダンスシーンはお手のものという感じですが、今でも踊れる!と新太さんが踊るんで、そこでも爆笑してしまいました。

今は、テイラー(仕立屋)なわけですが、いろいろ事情が分かってくると、「小川さんって私の○○なんです」ってなぎさっちが伝えるってことだよね!「それで現代の純子はどこに?」問題に発展するわけですが…そこはつらい話になるので、見ていただきたい。

テレビ局のお仕事 今・昔

テレビドラマでテレビの場面が出てくると、詳しく知っているから、制作するための苦労が少ないのだろうと思ったりします。また、今のテレビにはないものが昔はテレビ放送されていたということを宮藤官九郎は強く言いたいのかなあと思います。

情報番組担当の渚ですが、番組のメインMCの不倫スキャンダルで収録がてんやわんやになる第3話。代打に立った八嶋智人さん(本人役)と総合演出役の山本耕二さんのやりとりなどはテレビを知っているだけにリアルなんでしょう。

一方で、昭和に戻った小川先生、純子が深夜のお色気番組に出場するっていうので、保護者として、ズッキー(秋山竜次)というケーシー高峰さんを彷彿させる医者のコスプレ?をした人気司会者の番組観覧をする。ズッキーさんのセクハラ行動が止まらないので、小川先生はイライラ。(令和に行ってしまって、向こうの価値観に染まったのだろうかと自分でも驚いている小川先生)

しかし、収録中に熱中症のような症状で倒れる純子にズッキーさんは、見事に紳士的に対応するという場面もあって、みんなちゃんと「仕事としてやっている」という描き方でした。

4話でも、テレビ収録の場面がありましたね。ラブシーンに関して、タレントの希望にそった演出を調整する係の人(インティマシーコーディネーター)なども出てきていました。さすがテレビのことは詳しい。

あと…カウンセラー室の「地獄のオガワ」にみんなが相談しにくるシーンは毎回面白いです。「ドラマのタイトルのジェンダー問題」とか。今だったら「男女七人夏物語」⇒「人間七人夏物語」でないととか…いやいや七人ってあったら人間じゃない?

6話からも楽しみです

いよいよ純子も未来へやってくるとのことで…。

タイムマシーンが気がるに使われていくのでしょうか。タイムパラドクスが起こってしまわないだろうか?などと心配しています。

未来を知ってしまったのに、それでも過去を今までと同じ熱量で生きることができるのだろうかとか、考えます。

昭和と令和の文化比較はいったんおさまって、SF色が強くなっていきそう。最後まで楽しみにしてみてみます。