海辺から半歩下がって綴る《ドラマ・映画の話》

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朝ドラ ちむどんどん 完結! 感想②

不可解な行動をする登場人物たち、最終回まで完走

ついに、2022年9月30日、問題作、「ちむどんどん」が終了しました。

沖縄、やんばる地方から、1972年に、美味しいものを食べたい!と言って、孤立無縁で高卒の暢子が上京し、料理人を目指すというストーリーでした。

当初期待度は高かったのですが、なかなかに登場人物たちの言動がとっぴというか、舌足らずというか、不可解だったため、個人の体感として、周囲のドラマ好きの人の90%から、嫌われてしまったようです。

出だし1か月くらいの時から、感じた違和感が最後まで抜けず、トンチンカン、チグハグなままでした。肝心なシーンをはしょってとびとび、どうでもいいところに尺を使う、語彙力が小学生的?などなど脚本のアラがよく話題となっていました。とにかく兄の詐欺、無銭飲食、迷惑行為、借金踏み倒しなどが野放しだったことで、さわやかな朝のひとときが、ざわざわしたという声多数。

主人公は終始、東京に来る必要性があまりなく思いつきで来たという描き方でした。それゆえ高級イタリアンレストランに勤めているものの、本人は、高級店のサービスを知らないで育ち、憧れたこともない。イタリアのことも何も知らず、思い入れがない。なぜイタリアンレストランにいるのか分かってないままでした。

とくに問題だったのは、可愛げがないように描かれていたこと。

たった一人、東京で自分を雇ってくれたオーナーに対して、雇われてから早々にケンカ売った(「オーナー何にもしてないのに偉そうですよね、うちと料理で勝負してください!」とか言った)こと。あの時、視聴者は暢子にドン引きしてしまって…ずっと暢子は反感を買われ続けたのでは。なぜ脚本家は嫌われるように仕向けていたのか…。

 

いつも、美味しい物を食べたい!と言ってる暢子は、食べたい人で、料理人らしくないのも当然?その割に東京で食べ歩きのシーンは皆無でした。無理矢理料理人にしてる感じが伝わってきて、手元がずーっとおぼつかないままでした。成長が描かれないので視聴者も???

 

不必要にピンチに陥らせてから、一気に丸く収める展開は至るところで行われていましたね。暢子が上京した夜、鶴見で親切な人に助けられ、銀座のレストランに紹介状を書いてもらい、翌日から働き出すことになるのですが、そのレストランのオーナーこそが暢子を子供の頃に引き取ると言った叔母さんなんです。ならば、孤立無縁で上京する必要なかったんですよね。普通に親から親戚に連絡して、働かせてもらう展開でよかった…。それでも充分に冒険じゃないですか。普通に素人がプロの料理人になる過程を描いてくれればよかったのに。

なぜ、子供の時に養子に行く約束していたほどの縁の東京の叔母さんを母は思い出さないのでしょう?一人で住むところも仕事の経験もないまま、電車もない沖縄育ちで、いきなり上京させるの?理解しづらく、視聴者も困惑する者多数…。

 

暢子の接客態度が悪く、常連客を怒らせて、新聞社に行儀見習いに行かされたときも…「なんで新聞社なの?なんでここまでに数年経過?接客態度は入ってすぐに店で教えなよ」と思った視聴者多かったでようですね。和彦に出会わせるためとはいえ、不自然という意見がよく聞かれました。

さらにびっくりしたのは、新聞社の教育係の人に「暢子さんは、人柄は100点満点」とセリフで説明させたこと。

礼儀知らずで、目上の人をすぐ非難する様子を延々ドラマで見せておいて、セリフで全くあてはまらない形容詞でほめて、そういう人を描いたことにするっていうのは禁じ手だと思うのです・・・。ドラマにする意味ないですよね。

のちに結婚相手となる幼いころからの知り合いの和彦との新聞社での再会があっさりしていましたね。せっかくの再会なのにもったいない。再会して、すぐさま和彦の恋人の同じ新聞社の女性、愛も紹介されるのですが、このとき愛が、初対面の暢子に「ああ、沖縄の、虫を食べてたという子ね」と言うシーンは強烈でした。都会人が田舎者をバカにする典型的な描写です。愛という女性、かなりきつい性格のお嬢様なのだろうと思ったものです。

(暢子より性格がいいという声も多数あるようなのですが、性格はよくないと思います。ただ、知性がそなわっていて、お行儀もいいので、見苦しくないということです。暢子は、その反対で、知性が乏しく礼儀作法を知らない)

元カノを振って暢子を選ぶ過程の脚本がまずかったため、和彦も視聴者から嫌われてしまったようです。

暢子と和彦は同じ下宿に住む設定にしたのに、二人の間に友情や信頼からの恋心をはぐくむ小さなエピソードが全くなかったのが残念。

和彦役の宮沢氷魚さんと暢子役の黒島結菜さんは絵面的に恋人にも夫婦にも見えなかった。ここは黒島さんに似合う俳優さんをキャスティングした方が良かったです。

暢子をめぐって鶴見のそばの海岸で、和彦と豆腐屋の男性が相撲を取るシーンについても???となりました。高度経済成長期の鶴見の海って京浜工業地帯なのに沖縄にわざわざ鶴見の町内会で慰安旅行したのか・・・と思うような、きれいなビーチで、相撲大会をしていました。

和彦は、新聞記者なのに途中から語彙力が小学生並みになっていたように感じられました。結婚を反対する母親に「お母さん、ぜひ披露宴に来てほしい。美味しいものもたくさん出るよ」というのです。そんな説得あります?「美味しいものがあるのね、出席するわ」→「結婚いいわよ」という流れでした。

その後、和彦は暢子の兄のせいで新聞社を解雇されるんですよね。この兄の扱いに、多くの視聴者は違和感がありました。何というか、コミカルに軽く、笑うエピソードのように、兄の問題を入れてきていたので…笑い事にならないはずなのに、そういうスタンスのドラマなのですか?と引き気味に…。

 

妹の歌子はよく熱をだすので、レストランオーナーの紹介で東京の病院で検査することになり、母親と上京するというエピソード。

病名も治療法も分からなかったとき、原因が分からないながらも大きな病気がないと分かってほっとしたと言っていたのに、翌日の放送でのっけから「もう、死にたい」という暗く思いつめた歌子のセリフがあり、その後暢子の料理を食べて急に「もう大丈夫!生きる!」というような展開がありました。その間わずか十分くらい。

歌子の気持ちのアップダウンの激しさに、視聴者は置いてけぼりになっていたと思います。いい雰囲気のシーンをランダムにつなげても、しらけるばかりでした。

この時、オーナーが、生きる気力を取り戻した歌子と「フレンチの名店に一緒に食事に行きなさい」と、食事券をプレゼントしてくれたのに、その食事シーンがなかったのもがっかりしました。そこで、接客サービスやフランス料理の味を研究する暢子やめったに来られない東京で初めてフレンチを食べる歌子を見たかった。それなのに、「あーおなか一杯」って道を歩いているシーンはわざわざ撮影しているのです・・・。(そのシーンはいらないです)

 

両足骨折したシェフの代理に、先輩を差し置いて暢子が抜擢されてたときのこと。なぜ暢子なのか、分からなかったです。そんなに活躍してませんでしたよね・・・。また、暢子は、はりきってやたらに厳しくふるまい、レストランの仲間に総スカンをくらうんですが、母に電話して、暢子の長所は「素直に謝るところ、感謝をちゃんと伝えるところ」と言われて、すぐそれを実行し、シェフの代行を無事終えることができたというくだりも、変でした。

シェフ代行で、スキルを磨いたり、食材の仕入れについての知識を得たりといったことがなく、「シェフ代行という仕事は、ありがとうとごめんなさいをきちんと言える人ならできる」という話になってしまったのはちょっとずれています。

料理ドラマって、もっと面白くなるものなのに、もったいない。

 

そのほか、いろいろあって、荻窪で暢子が沖縄料理の店を始めることになった時、イタリアンレストランのくだり、要らない…と思った人は多かった印象です。上京してからずっと、暢子は鶴見のあまゆという沖縄料理の店で家賃一部の代わりに料理作っていたから、そこの経験で十分だったよね…と。

また自分の店を持つ理由として、「自分の作った料理を美味しそうに食べている人を見るのが幸せだから」というような暢子のセリフ、オーナーシェフの覚悟としては弱いような気もしました。別に、家庭で家族に食べてもらうのだっていいし、お客様に料理を作ることなら、オーナーにならなくてもできます。お店を持つ必要がない。脚本家も気づいていると思っています。毎回動機をずらしていく。暢子のこと、この脚本家は愛情をこめて書いているのかどうか…それが、視聴者には疑問に思えてしまって、嫌な気持ちになってしまうのかもしれませんね。

それに沖縄そば、美味しいものですけど、暢子の店のは盛りが少なめに見えました。今時の視聴者は、テレビで、熱々の、大きなどんぶりにたっぷり入ったおいしそうなラーメンの映像を見ていますから・・・比較するとあまり魅力的に見えなかったです。(せめてお客様にどーんとよそってあげて)

ベテラン陣は揺らがない

暢子を偶然助けた鶴見の沖縄県人会の会長的な人を演じたのは片岡鶴太郎さんで、生き生きしていました。和彦の母役の鈴木保奈美さんも。

暢子の姉、良子役の川口春奈さんも比較的生き生きしてましたね。

役を超えて、本人が存在感を出すことも不可能ではないのでしょうが、脇役だからなんとかできるのかも。

主人公で毎回愛されづらいセリフを言って、好感度上げるのは難しいですよね。

兄もラストのおじいさんになったシーンで「借金は倍にして返した」とナレーションでさくっと説明してましたが、0.5秒でラストにナレーションでいうまでに、もう少し厳しく叱られたりするシーンを入れたり、迷惑をかけた人などに謝罪しに行く場面も入れられたのでは・・・。

肝心のシーンを描かず、テーマを掘り下げず、要点をずらして、時間を細かくワープさせて、あらすじだけを追っているかのようなドラマは、つまらないですよね。演技がどうこうという前に。脚本・演出で主人公は礼儀作法をあまり知らなくても、努力とか愛嬌で応援したいと思ってもらえるようにもっていくのが、通常の朝ドラ。主人公が成長していく姿を見守るようなスタイルというか。多少テンポが遅くても、細々と経過を描くのがセオリーです。

最終的には、暢子はやんばるの実家で定食屋を開くのですが、家が道から見えないほど、長い階段を上った先にあるようなイメージ映像が何度も使われています。草深く奥まった場所にある店に、人はそこまで集まるのかしら…とは思いました。また、最終回の前に、不用意に主人公をピンチに陥らせ、あっさり解決…というのを何度も使っていて、あまり面白くはなかったです。(重体だったのに、兄妹が海に向かって叫んだあと、一気に強靭な健康体になったかのような歌子のエピソードなど。ここでまたもや、兄はタクシー代踏み倒そうとしており・・・それがただの笑いを誘うものとして描かれていました。終始、兄のひどい行いはギャグ感覚。タクシー運転手(ゴリ)にしてみれば笑い事ではないのに・・・)

レストランオーナー役の原田美枝子さんも、あさイチで言ってましたけど、「こういう現場もあるけど、よく頑張ったわね~」です。黒島さん、演者の皆さん、お疲れさまでした!

 

☆2024年追記:

黒島結菜さんと宮沢氷魚さんがお付き合いをしてるそうです〜。パートナー関係を発表しました!朝ドラとしては酷かったものの、生涯のパートナーと出会えたのですね!おめでとうございます!お幸せに!