「聖☆おにいさん」とは
中村光さんの人気コミックでドラマ化されてきましたが、今回は漫画のなかでも描かれていた、走馬灯の映像用の企画「ホーリーメン」を主軸に「THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団」として映画化してくれました。
ドラマ版から福田雄一監督で、プロデュースには山田孝之さんが関わっており(出演もしています)、さっそく見てきましたが、今回もキャスティングが絶妙でした。
やはり主役の2人がまずピッタリなのが魅力
ドラマの時から、誰がイエスとブッダをやるのであろうか?と期待が高まっていましたが、これが期待以上で、まず、イエスが松山ケンイチさん。
コミックのイエスがここに!というくらいのハマり具合。日本人なのにイエスそのもの……というか中村光さんのイエスそのもの。
眉間に寄るシワから何から「現代の立川に暮らす休暇中のイエス」なのです。
ブッダは染谷翔太さん。福顔ですし、穏やかで動物に愛されている姿がこれまた、後光が射すくらいにブッダです。本来はインド人なのかもしれませんが、日本の漫画であり、日本の映画ですから、よいのです。これ以上ぴったりな人がいるだろうか……。
ギャグ漫画でも作者は豊富な知識をもとに描いている
原作はギャグ漫画ですが、聖書や仏教のさまざまなな知識が盛り込まれており、登場人物も2つの宗教に関する神や聖人、天使、悪魔などなど多数います。漫画を読んでいるうちに、イエスやブッダの経典にあるようなエピソードに詳しくなるのが「聖☆おにいさん」です。漫画を読んでいれば、詳細分かるものの、映画で初めてみたら、出てくる人がもともとどういうキャラなのか気にならないかな?と思っていました。でも、「THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団」を見たら、ちゃんと背景はしらなくても楽しめるようになっていました!それが、エンターテインメント、それが映画ですものね。
知っていても邪魔にならない「聖☆おにいさん」の世界について
とはいえより楽しく映画をみるために、一応漫画の方を踏まえて「聖☆おにいさん」の天界の様子を解説すると……
天界に神や聖人、天使たちが住んでいますが、イエスとブッダは住んでいる地域や組織が違っていて、イエスのいるエリアはいわゆる天国で、「天国の門」が受付となっています。ブッダの所属は天部で、住んでいるのは極楽浄土と言われるところなのだと思います。人が亡くなって、天へ召されると宗派に応じて、天界の中で案内されるエリアが違うということなのでしょう。
イエスとブッダは、有給休暇をとって、下界(立川)へ降りてきているのです。
天国にはイエスのお父さんである「神」がいて、イエスと共に布教に勤めた初代教皇ペトロなどの弟子たち(絵画「最後の晩餐」などに描かれている方々)や、大天使たちもいます。今回映画「ホーリーメンVS悪魔軍団」には、神であるお父さん(佐藤二朗)と自称「主に最も愛された弟子」のヨハネ(神木龍之介)、天使長のミカエル(岩田剛典)が出てきていましたね。
ヨハネはイエスの死後、弟子の中ではもっとも長く生きていたことから、弟子の中では末っ子扱いなんです。地上で、「ヨハネの黙示録」を書き残した人でもあり、その文才を買われて、ミカエルが「ホーリーメン」の脚本を依頼したというわけです。
「聖☆おにいさん」に描かれるイエスのお父さんは、過保護なところがあるという設定で、鳩の姿で下界へ現れたりもしますが、天からいつもイエスを見守っている感じです。天使たちも天からいつでもイエスをサポートできる体制をとっているようです。
一方、天部の神々は、ブッダに対して厳しいです。その筆頭が今回映画にも出てきた梵天さん(賀来賢人)です。助けてくれるというより、「プロデュース」してくる存在。漫画の中では、絵の上手なブッダに連載漫画を描かせる様子が描かれていて、その敏腕編集者というか剛腕編集者ぶりは激しいです。必死でその要求にこたえるブッダにいつも同情してしまいます。
同じく帝釈天さん(勝地涼)や弁財天さん(白石麻衣)も厳しい。というか厳しくすることがシッダールタ(ブッダの本来の名前:ブッダとは悟ってからの呼ばれ方)のためになると思っている節があります。
天女たちも神々の指示に従って、ブッダを「ふくよかにしよう」としてきたりします。イエスの周りの人々とは違って、ブッダを甘やかさないのが、天部の方々の特徴です。
ゆえに、立川のアパートに梵天さんがミカエルと共に来た時、ブッダは「いやな予感」しかしなかったのです。また、演技指導の弁財天さんがめちゃくちゃ怖いのは、音楽や芸術の神だからというだけでなく「シッダールタに厳しいのがいつものこと」だからというものあります。
とはいえ、漫画で描かれる弁財天さんは、ビジュアルは白石麻衣さんかなり再現していますが、キャラ的に叫んで指導するイメージはないです。浮かない感じの顔をするブッダに、「あら、シッダールタどうしたの?もっと厳しくした方がよかったかしら?」という感じのお方です。映画は映画で、キャラは違っていても全然かまわないですが、弁財天さんに対して、悪いイメージが残らないといいなあ……。
また、今回の映画にはブッダの弟子は登場しませんでしたが、十大弟子と言われる方々も天部にはいて、漫画では美形のアナンダや運転手として活躍するサーリプッタがよく登場します。
ほかにも漫画には、ゼウスなどの神々も登場するので、広い天界のどこかに皆さんすみ分けて暮らしているのでしょう。
キャストの方々紹介・とくに悪魔の二人が素晴らしかった
主役以外のキャストでいうと、梵天さん役の賀来賢人さん、帝釈天役の勝地涼さん、ミカエル役の岩田剛典さん3人ともビジュアルの再現性高くてびっくり。
実務家なので、3人ともスーツが衣装です。漫画では、帝釈天さんは、アルマーニのスーツを着ている設定なんですよね。おしゃれに気遣う帝釈天さん。今回のスーツ、アルマーニでしたか?
梵天さんはどういうしゃべり方が正解なのか難しい役ですよね。疲れを知らないパワフルさがあって、目力が半端ない方なのですが、賀来賢人さんの目はかなりイメージに近かったです。すごい。がちょうに乗って下界へ来るという設定ですので、マイがちょうといるところもいつか見てみたいです。
ミカエルは、天使たちを束ねる天使長で、責任感もあって華やかな印象の方。一方で暴走する一面もあるんですが、岩田さんもなり切っていましたね。漫画ではほかの大天使ラファエル、ガブリエル、ウリエルもよく登場しますので、いつか彼らと一緒のシーンも撮影していただきたいです。個性豊かな大天使たちを再現するのは大変かもしれないですが。
そして、イエスの弟子たちから末弟のヨハネが今回登場。神木隆之介さんはビジュアルもそうですが、キャラもぴったりでした。ヨハネのお兄さんもイエスの弟子のひとりなので、ぜひ今度兄弟出演してほしいです。(というか、弟子の中でも漁師兄弟はいつか映像化しないと寂しいですよね。誰がふさわしいのかいろいろあると思いますが、松山ケンイチさんを主軸に合う人を考えていただき……)
余談ですが、普段のヨハネは、天国の事務方のお仕事をしていて、必ず定時で帰るタイプです。
イエスが尊敬している、十一面観音さんには仲野大賀さんでした。イエスは、ブログやゲーム実況などで人気を博す十一面観音さんのファンなんです。イエス自身も特撮やドラマのブログを書いている人気ブロガーなんですが、そのイエスが心酔しているという設定。ニット帽の下に十面が控えている姿が実写化されています。面にはそれぞれが意見があるので、ヨハネとの共同脚本ですけど、十一面観音さん自体が11人との共同脚本という強みがあります。
そして、今回強く感銘を受けたのは、悪魔側のおふたりの演技・存在感です。
ブッダの解脱を阻止しようとしているマーラという魔物(悪魔というのがしっくりこない)がいるんですけど、ビジュアルも異世界的で難しいですし、ブッダにくらべてあまり一般には認知されていないですよね。でも漫画では、よく登場してきて、主要キャラのひとりです。性格も独特なので、演じるのもビジュアル化するのも難しいと思っていました。
ですが窪田正孝さん、すばらしかったですね。映画のタイトルが「THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団」とあるように、イエスとブッダの敵役として扱いは大きいと思っていましたが、大活躍でした。山本美月さんを筆頭に3人の不良娘たちもすごくよかった。
そしてルシファーという天国側の悪魔は、堕天使として結構知名度ありますので、ご存じの方も多いと思います。天使長ミカエルのお兄さんでもあり、かつて天使だった存在。漫画の中でもものすごく人望があって、影響力が大きい存在として描かれているのですが、映画でも重要な役どころ。
これを演じきったのは、藤原竜也さん。圧巻でしたね。藤原竜也さん以外ありえないと感じました。
まとめ
漫画の方の設定を少し理解しておくと、より一層「聖☆おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団」が楽しめるのではないかと思いましたので、あらすじに触れないような感想含めての世界観の説明でした。
映画内でブッダも言っていますが、基本的に人をぶつとか蹴るなどはできない聖人2人による戦隊企画なので、全体的にほっこりしている映画です。もちろん、立川での日常生活もしっかり描かれ、くじ引きのシーンや「パンチとロン毛」の舞台のシーンもあります。
年末年始、お出かけしたいなら、爆笑するのとは違うんですが、ハッピーな気持ちになるこんな映画を映画館でみてもいいかもしれません。